地に足のついたサステナビリティ
「antica locanda MIYAMOTO (アンティカ ロカンダ ミヤモト)」は、「FOOD MADE GOOD Japan Awards 2024」でBEST調達賞を受賞したイタリアンレストラン。熊本の固有種「あか牛」を薪で焼き上げた料理をメインに、地元でとれた野菜や海産物を活かしたコース料理などを提供している。
オーナーシェフの宮本けんしん氏は、熊本で開業した2006年当時からずっと、地元の肉や野菜を使うことにこだわってきた。その背景には、若き日に暮らしたイタリア・トスカーナ地方の風景がある。近隣の産地でつくられるワイン、渓谷で放牧されるキアーナ牛、山でとれるキノコなどの食材が、当たり前にすぐそばで手に入り、それらを味わい豊かな伝統的イタリアンに仕上げた修行時代。それがantica locanda MIYAMOTOの阿蘇でしかできない料理へとつながった。
開業当時、日本ではまだ地産地消という言葉も一般的ではなかったが、宮本氏は気に入った野菜の生産者に頼んで畑を見せてもらったり、阿蘇の草原で放牧されているあか牛に注目するなど、いち早く取り組んできた。
「日本全体で環境維持に一番寄与しているのは、地方の農家なんです。農業や畜産業で生活していくためにしていることが、各地の貴重な環境を守っている。そういう地に足のついたサステナビリティに、食材を仕入れる私たちレストランも一緒に取り組んでいかねばならないのです」と宮本氏。

宮本けんしん氏
「美味しい」の一歩先へ行くきっかけ
宮本氏は最初に「FOOD MADE GOOD」の基準を確認した際、日本の文化や慣習、農家の現状には合わないと感じたという。
「基準の中には西洋的な価値観が色濃く出ているものもあります。例えば『ベターミート』。ストレスのない飼育環境というのが基準の一つで、放牧などで草の粗飼料を中心に飼育するのが良いということなのですが、実際はそれほど単純にはいかない。牛舎で生まれ育った子牛を急に放牧地に連れて行っても順応できません。あるいは、有明海で希少種に指定されている魚を材料とする郷土料理。資源保護のために途絶えさせるより、調査漁業でとれた分を美味しく調理して地元の方々に振る舞う方が、『海を守ろう』という気持ちの醸成になるのではないでしょうか」
各地の文化や独自性と向き合うサステナビリティには、画一的な価値観や基準では合わない部分も当然出てくる。宮本氏はそのような価値観・基準を覆すメッセージを世界に届けようとしている。
届けたいその一つが、特に力を入れているあか牛だ。あか牛は平安時代から阿蘇で放牧され、豊かな草原の維持に貢献してきた。
「世界的に見れば、畜産業は環境負荷が高いと悪者にされがちですが、阿蘇では面白いことに環境維持に寄与するシステムができています。放牧や野焼きで草木が育ち過ぎて森になるのを防ぐことで、600種以上の草が生える豊かな植生や、高い二酸化炭素吸収力を守る。雨水が染み込みやすく蒸発しにくい草原の特性を活かし、六本もの一級河川の源流域として機能する。阿蘇の循環システムは、日本の最大の宝だと僕は思っています。そういうことをもっと知ってほしい」
世界的な基準と、身近な食材のこと。その両方をお客さまに伝えることが、「美味しい」を求めるだけではなくその一歩先にある生産者や環境のことまで考えるきっかけになると、宮本氏は語る。

antica locanda MIYAMOTO(アンティカロカンダミヤモト)
熊本市中央区新屋敷1丁目9番15号 溢熊ビル102号室
https://al-miyamoto.com/









