サステナビリティ・レストラン#1ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ

生産者と消費者をつなぎ、ともに未来へ

地球と人類のサステナビリティについて考えたとき、大きな割合を占める項目のひとつに「食」がある。地球環境や人権に配慮しながら食糧を採取・生産し続けるためには、生産者や消費者、小売店やレストランなどフードビジネス全体で行動していかなければならないと気づき始めた人々が世界各地で取り組みを始めている。その一つが、食のアカデミー賞と称される「世界のベストレストラン50」でサステナブル・レストラン賞の評価を行う英国のSustainable Restaurant Association(SRA)だ。もちろん、日本のフードビジネス業界も例外ではない。SRAと連携する日本サステイナブル・レストラン協会をはじめ、多くのレストランがサステナブルであるための指標(FOOD MADE GOOD スタンダード)やサステナビリティを実践するレストランへの表彰(FOOD MADE GOOD Japan Awards)に参加・協力している。食、フードビジネス、レストランのサステナビリティをどのように考え行動しているのか。最先端でリードする人々にはそれぞれのストーリーがあった。
CULTURE

2023年、2024年と2年連続で「FOOD MADE GOOD Japan Awards 大賞」を受賞したのが、東京都練馬区石神井にある「PIZZERIA GTALIA DA FILIPPO(ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ)」だ。地元・武蔵野で育つ野菜や果物をはじめ、日本各地の農家・畜産農家・漁師といった一次生産者と直接つながり、味や栄養価にまでこだわった食材を仕入れている。

また、地域コミュニティとの連携や災害支援、スタッフの育成・適正評価にも力を入れるなど、多角的な活動が注目・評価されている。

ナポリピッツア世界大会で最優秀賞を受賞した経験を持つオーナーシェフの岩澤正和氏は、「この受賞は、私個人がピザの大会で優勝したのとは、全く意味が違うものです。スタッフ全員が、社会でやるべきことを当たり前にやってきたことで二年連続の受賞という結果につながった。それと、地域の方々もすごく喜んでくれたのが嬉しかったですね」と笑いつつ、「嬉しいだけでなく、サステナブルなレストランとしてもっとお手本にならなきゃという使命感みたいなものもあります」と背筋を伸ばす。

オーナーシェフの岩澤正和氏

マルゲリータ STG。ナポリピッツァ世界大会で最優秀賞を受賞したピザ。STGは、昔ながらの製法を守ってつくられる食品に対して認められるヨーロッパ統一規格の称号。

彩り鮮度野菜ミックスサラダ。地元・練馬で収穫された野菜がふんだんに使われている。味の濃い新鮮な野菜が美味しさと人気の一品。

創業時にイタリアから取り寄せた窯。

賑やかな装飾の店内。

食材を囲む三者のつながり

岩澤氏は、「レストランには、生産者と消費者をつなぐ役割がある」と語る。生産者がこだわってつくった食材は、一般的なスーパーの店先に並ぶものよりどうしても高価になるが、そこには栄養価や味といった目に見えない付加価値がある。それをたくさんの人に伝え、料理を通して身近に感じてもらうことは、食だけでなく社会や環境を未来へつないでいくためにも重要だ。     

PIZZERIA GTALIA DA FILIPPOでは、生産者のもとに足を運び、適切な価格での取引を行っている。以前から続けている活動だが、近年は取引先が増えたためスタッフで担当を分け、それぞれが畑で収穫したり、海に出て船酔いしながら魚を釣ったり、あるいは山に踏み入って山菜を取ったりといった経験を積んでいる。また逆に、生産者が食材を納めるために店まで来て、お客さまと一緒に食事をしていくこともあるという。食材を生産する人と、調理する人、食べる人の三者が同じ空間で並ぶ。日本社会で途切れかけていたつながりが、ここでは再び結ばれている。

旬のフィリッポ厳選たっぷりお野菜の酪恵舎ビアンカ。新鮮な牛乳でつくられる酪恵舎のモッツァレラチーズはもちろん、北海道と東久留米で生産された小麦粉の味わいも楽しめる。

楽しくて美味しい場所からの発信

生産者に加え、岩澤氏が重視するのが地域との関係性だ。

「この店がある街として、また店で働くスタッフたちが暮らす街として、ともに豊かに持続的に成長していきたいと考えています。地域で助け合わねばならない状況の一つが、災害の発生時です。レストランに備蓄している食材は被災者の貴重な食料となりますので、緊急時に食料を解放する場合、何食分をつくれるのかを事前に計算しています。『このお店があそこにあって良かった』といわれるのが目標ですね」

PIZZERIA GTALIA DA FILIPPOが関わる地域は、石神井だけではない。2025年8月には東京都東久留米市に農園レストラン「La tavola felice de fillippo(ラ ターヴォラ フェリーチェ ディ フィリッポ)」をオープン。地元の湧水や森の恵みを活かした季節料理を提供し、さらに食・農業に関する学びと体験の場としても運営していく。

生産者とのつながりも地域とのつながりも、その楽しさ・美味しさを持続していくために必要なこと。だからこそ、レストランで働くシェフやスタッフが今、積極的に社会や環境のことを考え、行動していかなければならいと岩澤氏は言う。

「料理を食べに来るお客さまにとって、レストランはまず第一に『美味しくて楽しい場所』。ですが、それだけを考えていたのではレストランも生産者も、食というもの自体が未来へつながらない。そこをきちんと考えていきましょうと、お客さまや次世代の方々にも発信していきたいです」

焼きたてのピザ。

PIZZA GALLIYA DA FILIPPO(ピッツェリア ダ フィリッポ)

東京都練馬区石神井町2丁目13-5
https://filippo.jp/

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