地域をつなぐ水の力
現在、日之影町の山腹用水路を管理しているのが「日之影土地改良区」である。土地改良区とは、地域の農家が協力して自分たちの田畑や用水路を守り、より良くしていくための組合組織で、土地改良法に基づいて設立された。愛称を「ネット日之影」という。水土里ネット日之影の主任・工藤尚樹氏に話を訊いた。
「歴史を辿れば、七折用水路の建設は1920(大正9)年に始まっています。完成したのは1929(昭和4)年のことです。この間、最初は請負業者に依頼したのですが、場所が悪くて業者が仕事を放棄してしまい、結局は組合の直営という形で進められました。他方から来た作業員の方々もいたようですが、あまりの難所に無理だと諦めてしまい、最後は組合員自らの手で掘り進めて完成させました。
五ヶ瀬川支流の日之影川から取水した全長三四キロメートルの用水路は、七折地区90ヘクタールの水田に行き渡っています。その水を使ってお米をつくっている組合員の方々は二八三名います。
この用水路は、2015年に世界農業遺産として認定された高千穂郷・椎葉山地域の認定要素の一つとして重要な役割を果たしました。歴史的価値が評価されたんです。
現在、私どもの仕事のメインは用水路の管理・保全です。水路完成当初はコンクリートのない素掘りの箇所もあったので漏水が多かったそうです。大変なのは、灌漑時期の水害です。台風や大雨になると川が濁流になり取水口が詰まってしまうんですね。田んぼには一刻も早く水を入れないといけませんので、取水口に近づけるタイミングを計って自分たちが行くようにしています。
そのような苦労はあっても、組合員の方から『水を届けてくれてありがとう』という声をいただけるのは嬉しいです。それに今年も良い米をつくろうと皆さまと一緒になって話し合うのも楽しいです。そういった地域との関わりが大切だと思っています」


自分たちの用水路は自身で守る
日之影町役場に勤務する白石誠氏の実家は農家。自身も組合員で七折用水路との関わりも深い。
「用水路を維持してゆくためには日々の管理が大切です。管理は組合員が任された地域を分割してやっています。年2回定期的に、用水路の草刈りと清掃作業をやっています。ただ高齢化が進んで人数を確保するのに苦労しています。作業は一日あれば終わりますが、用水路の場所が険しいところにあるので、近くまで車で行くことができないんです。道なき道を上ってゆくところが結構多いので若い人の力がないと厳しいんですね。それでも『自分たちの用水路は自分たちで守る』という仲間意識が強いので、なんとか頑張っています。今後とも続けられるよう努力したいですね」
七折用水路を維持管理するためには相当な費用がかかる。この地域では、用水路の豊富な水量と地形の高低差を利用した「日之影発電所」を運営し、その事業収入を活用している。土地改良区が発電所を運営することは全国でもめずらしく、険しい場所にある用水路の点検や補修作業の軽減に「電動水路点検車」などを導入するといった管理体制の維持を強化している。それは、とりもなおさず、先人たちが苦労してつくりあげた山腹用水路を受け継ぎ、次代へと繋いでゆくためにほかならない。

前列3人は日之影町役場の方々。前列中は白石氏。







