高千穂郷・椎葉山地域を構成しているのは高千穂町、日之影町、五ヶ瀬町、諸塚村、椎葉村の三町二村です。この地域は92%が森林で平場が無いんですね。平場がない段々畑では一つの作物を大量につくるというのが出来ないんです。一面を畑にするとかができないために複合的に経営するというのが伝統的な農林業になっています。
木材を伐採して売ったりとか、しいたけを栽培してそれを売ったりして、また一部の地域、椎葉では焼き畑をやったりしています。それだけでは生計は安定しないので、畜産、米、野菜、花、果樹などさまざまなものを組み合わせて複合経営を行っているというのが、この地域の特徴になっています。
高千穂郷・椎葉山地域の3町2村では、森林と伝統文化を継承してゆくために、1988年「フォレストピア宮崎構想」を構築し、森林と伝統文化の保全継承、新たな文化の創造、都市と山村の交流を軸に特徴的な地域づくりなどを進めています。その連携の下地があって、2013年ごろから世界農業遺産への活動が始まり、2015年に認定されました。
世界農業遺産に認定されると補助金がもらえるとかメリットがあるのかといわれれば、それ自体には何もありません。ただ、私たちの暮らす地域の価値というものが国連の専門組織から客観的、学術的に評価されたということは大変喜ばしいことだと思っています。
この地域で一番貴重なものは「地域コミュニティの存在」だと思います。
たとえば山腹用水路は、地域全部つなぎ合わせると総延長で500kmあるんです。畜産も高千穂牛が日本一になったり、神楽も約90の保存会があります。それらがずっと継承されてきたというのは地域コミュニティのあるおかげだと思います。これがあるから、さまざまなものをシステムで繋げてゆくことができるんです。
世界農業遺産というのはシステムを認定するものなんですね。その意味では、私たちの地域コミュニティが認定の核になったといえます。
今後の課題に関していえば、やはり少子高齢化です。これは世界農業遺産のあるなしに関わらないことです。今後、明らかに人が減っていきます。減ってゆく中で、今の山間地農林業複合システムをいかに維持していけるかということが大事なんですね。そのためには、今のうちにみんなで話し合いをして、課題を抽出し解決策を模索することが必要です。そうすればシステムも持続可能になるのかなと思っています。
世界農業遺産
社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業とそれに関連して育まれてきた文化、景観、農業生物多様性などが相互に関わり一体になった伝統的農林水産業のシステムを国際連合食糧農業機関(FAO)が認定する制度。創設の背景には、行き過ぎた生産性への偏重が世界各地で森林破壊や水質汚染などの環境問題を引き起こし、さらには地域の文化や景観、生物多様性の消失を招いてきたことがある。




