諸塚村役場 産業戦略課 課長若林裕貴

山を育て活かすFSC認証の村

宮崎県東臼杵郡にある諸塚村は、1,000メートル級の山々に囲まれ土地のほとんどが森林で平地は数%にも満たない村である。今から約120年前の1907(明治40)年、諸塚村は「林業を主体に暮らしを立てる」という宣言をした。以来、村人は生活の糧である森を育て守り続けてきた。そのサステナブルな暮らしはFSCの理念と合致し、2004(平成16)年にFSCの森林管理認証を取得した。これは世界的な第三者機関に森の管理が適切に行われていることを認められたということだった。諸塚村役場の産業戦略課課長・若林裕貴氏は語る。
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山で木を伐ったら、また植える。次世代の担い手を確保する。そして、環境に配慮しながら道をつくる。こうした私たちの「山を育て活かす」というサステナブルな活動が、FSCの理念に合致しているのではないか、という話が持ち上がりました。そこで2004年、村長を管理者とし、村内の森林所有者を一つのグループとして登録する形で申請しFSC認証を取得しました。

現在は、個人521名のほか企業や団体の山林を含む約1万1,280ヘクタールが諸塚村内で認証されています。

また、この認証取得に合わせて、耳川広域森林組合の木材加工センターをFSC認証工場とし、認証材の流通を行ってきました。しかしながら森林組合が加工事業からの撤退方針を発表しました。それを受けて、村がその事業を継承する方針を固めました。現在は一般社団法人ウッドピア諸塚が操業しています。

諸塚村の産業は、1957年に「四大基幹作物」として掲げられた「林業」「しいたけ」「畜産」「茶」による複合経営を柱としています。この椎葉山・高千穂郷エリアは、林業と農業を巧みに融合させた営みが評価され、世界農業遺産にも認定されました。現在の世帯数は約590世帯、人口は約1,300人と小さな村ですが、村内には多くの集落が点在しています。それらを結ぶ道路網は、さながら血液を循環させるかのように、盛んな林業を支えています。

また、各集落には住民が「村づくり」の主役を担う自治公民館制度があり、行政と綿密に連携するこの仕組みは「諸塚方式」と呼ばれています。その成果は高く評価され、農林水産祭のむらづくり部門で天皇杯を受賞するなど、独自の制度を有する村でもあります。

村の礎となっているのは、1907年に掲げられた「林業立村」というです。明治時代から植林を奨励し、一貫して林業を基幹産業として村づくりを続けてきた歴史があります。

現在、一番の課題は、山で働く人材の確保です。伐採とか切り出しなどは機械化が進んでいますが、木を植える、育林、保育などの部分はどうしてもマンパワーに頼らざるを得ないんです。その領域をやってくれる人が必要なんですね。

最近ちょっと明るい兆しが見えてきました。近郊の町から諸塚に通って山の仕事に従事する若者が出てきたんです。いわゆる通勤林業、そういう新しい関わり方もあるんです。これからは森林を保有しているという基盤を持たなくても林業をやりたいという若者たちに、山の魅力や自然や国土を守る公益性の高さなど、山の仕事の役割とその魅力を伝えてゆくことが人材の確保につながるのではないかと思います。

FSC森林認証とは

FSCとはForest Stewardship Councilの略称。持続可能な森林管理を世界に広げることを目的に1994年に発足した国際的な非営利組織。ドイツに本部を置く。「環境」「社会」「経済」の側面からバランスの良い「責任ある森林管理」を推奨している。国際的なイベントや事業では、FSC認証の木材や紙製品などが義務付けられている場合が多い。

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